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「Heartbeat 」 #114

17時25分。
H駅。2人はバスを待つ間も、バスの中でも手を繋いでいた。そして降りるとき、佳榛は玲那を先に行かせ、

「おまたせ、一緒に行こうか」

と玲那の手を取り再び駅構内へ歩いていく。玲那の鼓動の高まりを保ちながら曲から曲へ移行するように乗り物を乗り換える。玲那には佳榛があのときのDJ SUSHIHARUのように見えてならなかった。

「私ね、いま、すごく、幸せなんだ。先輩に、私の家族を知ってもらえたのと、先輩がずっと家族とも付き合っていきたいというその気持ち、一時の感情じゃなくて、安定して、高揚させてくれるんだ」
「僕もだよ。これで2人はお互いの家族を知ったね。どちらも大成功だ。このまま安定して進むことができれば結婚も上手くいくだろう。お互い、家族とのだんらんを楽しめたよ。あとは進路を確実に進むことができたら最高だ。7割がたグルーヴに乗ってるよ」
「お互い、自分自身を信じて、神は備え賜えり、聖句よね。私の祖父もあのやちむんの花瓶に彫っていたくらい。重要な言葉なんだろうなって思う」
「先祖も、みているんだね。僕達を。ますます幸せにならなくては。僕の祖父の魂も、大きく成長した僕をどこかで、みているんだろうな。時計職人のヨーセフは今日も心の中でまわされる、小さな真鍮の懐中時計を造っているのだろう」
「そう、だよね」

佳榛は玲那をエスカレータに先に行かせ、手をつないだまま改札口に行く。

「もう、おうちに帰らなきゃ。君と、君の家族とのひとときをありがとう。忘れたくても忘れられないよ・・・この上なく最高だ」

佳榛は改札口を通る直前、玲那を強く抱きしめ、額にキスをする。

「まだ高校生だから、学校で会えるじゃない。たくさんのいい思い出が、受験や進路の励みになるといいね」
「ああ」

しばらくして、佳榛は玲那に手を振り、
「Servus!君のような、最高の貴婦人に仕えることができて、今日も僕は幸せだ!」
と無邪気に喜びを表現すると、
「Servus、私の、大切な騎士。愛してる」
と玲那は佳榛に投げキスをして見送った。


18時15分。
帰宅時のバスを待つ間、玲那のスマートフォンが鳴った。
「(通知:Direct Messages from 狼城佳榛 in Twiiter:玲那、今日もありがとう。愛する君と、君の家族に受け入れられて僕は幸せだ。僕と、一生涯を共にしよう。互いに至らない点を知り、助け合いながら)・・・・・・か、ありがとう。私も幸せなんだ。一生の、私の騎士。佳榛、愛してる、送信 ・・・と。私は大人になったんだ。佳榛の愛で、佳榛の体で・・・だいすき」

メールを読み、すぐに返信してスマートフォンを佳榛の待ち受けに戻すと、思わず唇の部分にキスをした。周囲に気付くとさっとスマートフォンをしまい、口元を隠して顔を赤くする。鼓動の高まりは、佳榛のDJが心臓で続いているかの如く帰宅中も止まらぬままだった。






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